1951年9月10日はベネチア国際映画祭で黒沢明監督「羅生門」が日本映画初の金獅子賞を受賞した日。
『羅生門』が1951年ベネチア国際映画祭で日本映画初の金獅子賞(グランプリ)を獲得。
日本映画が初めて外国人に理解され、称賛された画期的出来事であった。
1945年(昭和20年)8月15日は玉音放送により、日本の降伏が国民に公表された日である。
1951年といえば、食べるものがなく、味噌汁とたくあんで栄養失調の日本が映画の世界で金メダルを獲得したのである。
昨日9月9日桐生祥秀(21才=東洋大4年)が日本人初の公式9秒台 9.98を男子100mでだし、10秒の壁を突破した。素晴らしい記録である。
ジャンルは違うけれども、しかし、羅生門のグランプリ受賞はそれを遥に凌駕する。
★『羅生門』(らしょうもん)は、1950年(昭和25年)8月26日に公開された日本映画である。大映製作・配給。監督は黒澤明、出演は三船敏郎、京マチ子、森雅之、志村喬。モノクロ、スタンダード、88分。
(日本最初のカラー映画としては1937年の『千人針』)
芥川龍之介の短編小説 『藪の中』と『羅生門』を原作に、橋本忍と黒澤が脚色し、黒澤がメガホンを取った。舞台は平安時代の乱世で、ある殺人事件の目撃者や関係者がそれぞれ食い違った証言をする姿をそれぞれの視点から描き、人間のエゴイズムを鋭く追及した。
自然光を生かすためにレフ板を使わず鏡を使ったり、当時はタブーとされてきた太陽に直接カメラを向けるという撮影を行ったり、その画期的な撮影手法でモノクロ映像の美しさを極限に映し出している。撮影は宮川一夫が担当し、黒澤は宮川の撮影を「百点以上」と評価した。
音楽は早坂文雄が手がけ、全体的にボレロ調の音楽となっている。
日本映画として初めてヴェネツィア国際映画祭金獅子賞とアカデミー賞名誉賞を受賞し、黒澤明や日本映画が世界で認知・評価されるきっかけとなった。本作の影響を受けた作品にアラン・レネ監督の『去年マリエンバートで』などがある。
2008年(平成20年)から角川映画、映画芸術科学アカデミー、東京国立近代美術館フィルムセンターの3社によってデジタル復元が行われ、2010年(平成22年)に3社に対して全米映画批評家協会賞の映画遺産賞が贈られた。
※日本公開時
8月25日、大映本社4階で試写会が行われた。しかし、試写を見ていた永田社長は「こんな映画、訳分からん」と憤慨し、途中で席を立ってしまった。
さらに永田は総務部長を北海道に左遷し、企画者の本木荘二郎をクビにさせている。
翌日8月26日に本作は公開されたが、難解な作品だということもあり、国内での評価はまさに不評で、この年のキネマ旬報ベスト・テンでは第5位にランクインされる程度だった。興行収入も黒澤作品にしては少ない数字であった。
ヴェネツィア国際映画祭でグランプリにあたる金獅子賞を受賞した後で大映の永田社長は受賞の報告を聞いて「グランプリって何や?」と聞き返し、「訳分からん」と批判していたにもかかわらず、手のひらを返したように大絶賛し始め、自分の手柄のように語った。
人はそんな永田の態度を「黒澤明はグランプリ、永田雅一はシランプリ」と揶揄した。
ただし、黒沢は芸術家であったが永田は事業家であった。
黒澤も後年このことを回想し、「まるで『羅生門』の映画そのものだ」と評している。その後の大映は娯楽映画路線から芸術的大作映画路線へと転じ、吉村公三郎の『源氏物語』、溝口健二の『雨月物語』『山椒大夫』、衣笠貞之助の『地獄門』といった同社作品が次々と海外映画祭で受賞している。
黒澤明は、作品が映画祭に送られたこと自体も知らず、受賞のことは妻の報告で初めて知ったという。後に開かれた受賞祝賀会で黒澤は次の発言をしている。
「日本映画を一番軽蔑してたのは日本人だった。その日本映画を外国に出してくれたのは外国人だった。これは反省する必要はないか。
※雑感
谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』(いんえいらいさん)という随筆を1939年6月に世に出している。
黒沢監督はこの随筆を読んだかどうかはわからないが日本の美を表現している。
この日本の美を芸術として最初に理解したのは皮肉にも外国人であった。
逆にいうと外国人だったからこそ日本の美を評価できたのではなかろうか。
陰翳礼讃の中で谷崎潤一郎は
「西洋の文化では可能な限り部屋の隅々まで明るくし、陰翳を消す事に執着したが、いにしえの日本ではむしろ陰翳を認め、それを利用することで陰翳の中でこそ生える芸術を作り上げたのであり、それこそが日本古来の美意識・美学の特徴だ」と主張する。
こうした主張のもと、建築、照明、紙、食器、食べ物、化粧、能や歌舞伎の衣装の色彩など、多岐にわたって陰翳の考察がなされている。この随筆は、日本的なデザインを考える上で注目され、国内だけでなく、戦後翻訳されて以降、海外の知識人や映画人にも影響を与えている。
西洋ではすべてを埋め尽くすことに美を見出すのに対して、日本の美は余白を生かすことにある。「余韻」とでもいうべきであろうか。
と表現している。書道の美学に通じるものがある。
余談ではあるが1959年に児島 明子がアジア人として初めて世界一の美女コンテストのミス・ユニバースで優勝している。
大和撫子ここにあり。
measurements 94cm-58cm-97cm ナイスバディ、美ボディである。
敗戦国日本のなでしこが戦勝国アメリカに単身殴り込みをかけたビュティ・ページェントであった。戦後間もない時期を考えると「あっぱれ、お見事!」なのである。
1950年代は日本の美が花開く時代であった。
今日は『日本の美再発見の日』というべきである。
★児島 明子(こじま あきこ、1936年10月29日 - )は、日本のモデルである。1959年(昭和34年)に開催された第8回ミス・ユニバース世界大会で栄冠を獲得した。日本人・有色人種・アジア人として初めてのミス・ユニバース世界大会優勝者である。
Miss Japan & Miss Universe 1959 - Akiko Kojima
身長 / 体重 168 cm / 54 kg
BMI 19.1
スリーサイズ バスト94 - ウエスト58 - ヒップ97 cm
◆『羅生門』スタッフ
監督 黒澤明
脚本 黒澤明 橋本忍
製作 箕浦甚吾
出演者 三船敏郎 森雅之 京マチ子 志村喬
音楽 早坂文雄
撮影 宮川一夫
編集 西田重雄
製作会社 大映京都撮影所
配給 大映
公開
1950年8月26日 日本
1951年9月 イタリア
1951年12月26日 米国
1952年4月18日 フランス
◆『羅生門』キャスト
多襄丸:三船敏郎
都の内外に悪名が轟く盗賊。女好きとしても有名。真砂の美貌や気性の激しさに惹かれ、金沢夫婦を襲う。
金沢武弘:森雅之
旅をしている武士。言葉巧みに多襄丸に山奥まで連れて行かれ、木に縛られ、妻を手籠めにされる。
真砂:京マチ子
金沢の妻。一見、おとなしく貞淑な妻だが、内心では激しい気性を抱えている。
京マチ子美しすぎましたね。↓
杣(そま)売り:志村喬
金沢の遺体の第一発見者。事件を目撃し、人間不信になるが、最後に人間らしさを取り戻し、捨て子を育てようと決心する。
旅法師:千秋実
生前の金沢を目撃していたため、検非違使に呼ばれる。杣売りの話を聞いて人間不信となるが、ラストの杣売りの行動に心を救われる。
下人:上田吉二郎
雨宿りの際に暇つぶしに杣売りの話を聞く。杣売りの偽善性を突き、人間のエゴイズムをさらけだす行動をラストにおこなう。
巫女:本間文子
巫女というより霊媒師。金沢の霊を呼び込み、証言をおこなう。
放免:加東大介
河原で倒れていた多襄丸を発見し、検非違使に連行する。
★『羅生門』受賞&ノミネート
賞 年 部門 対象 結果
・ブルーリボン賞 1950年 脚本賞 黒澤明、橋本忍 受賞
・毎日映画コンクール 1950年 女優演技賞 京マチ子 受賞
・アカデミー賞 1951年 名誉賞 受賞
・1952年 美術監督賞(白黒部門) 松山崇、松本春造 ノミネート
・ヴェネツィア国際映画祭 1951年 金獅子賞 受賞
・イタリア批評家賞 受賞
・ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 1951年 監督賞 黒澤明 受賞
外国語映画賞 受賞
・ニューヨーク映画批評家協会賞 1951年 外国語映画賞 次点
・全米映画評論委員会賞 1951年 監督賞 黒澤明 受賞
・英国アカデミー賞 1952年 総合作品賞 ノミネート
・全米監督協会賞 1953年 長編映画監督賞 黒澤明 ノミネート
★黒澤 明(くろさわ あきら、黒沢、1910年(明治43年)3月23日 - 1998年(平成10年)9月6日)は、日本の映画監督、脚本家である。妻は女優の矢口陽子。
ダイナミックな映像表現とヒューマニズムに徹した作風で、『羅生門』『生きる』『七人の侍』など30本の監督作品を生み出し、アカデミー賞と世界三大映画祭(ヴェネツィア、カンヌ、ベルリン)で賞を得た。
小津安二郎、溝口健二、成瀬巳喜男らと共に世界的にその名が知られ、映画史においてはスティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、フランシス・フォード・コッポラ、北野武などの映画人に大きな影響を与えており、日本では「世界のクロサワ」と呼ばれた。
映画監督として初めて文化勲章受章、文化功労者顕彰、東京都名誉都民選出、贈従三位(没時叙位)、贈国民栄誉賞(没後追贈)。1990年に日本人初のアカデミー名誉賞を受賞。1999年には米週刊誌『タイム』アジア版の「今世紀最も影響力のあったアジアの20人」に選出されている。米国映画芸術科学アカデミー会員。
※オマケの付録
外国映画でモノクロを生かした作品で素晴らしいものに「第三の男」がある。
『第三の男』(だいさんのおとこ、原題: The Third Man)は、1949年製作のイギリス映画。キャロル・リード監督作品。第二次世界大戦直後のウィーンを舞台にしたフィルム・ノワール。
光と影を効果的に用いた映像美、戦争の影を背負った人々の姿を巧みに描いたプロットで高く評価されている。また、アントン・カラスのツィター演奏によるテーマ音楽や、ハリー・ライム役のオーソン・ウェルズの印象深い演技でも知られている。
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並木道のラストシーンも素晴らしい。