二百十日に因み 台風の思い出
今日2017年九月一日は二百十日である。
二百十日(にひゃくとおか)は、雑節のひとつで、立春を起算日として210日目である。日付ではおよそ9月1日頃となっている。
八朔(旧暦8月1日)や二百二十日とともに、農家の三大厄日とされている。
季節の移り変わりの目安となる「季節点」のひとつとされ、台風が来て天気が荒れやすいと言われている。夏目漱石の『二百十日』でも、二百十日は台風とは明言されないが荒天が描かれている。
台風襲来の特異日とされ、奈良県大和神社で二百十日前3日に行う「風鎮祭」、富山県富山市の「おわら風の盆」など、各地で風鎮めの祭が催されてきている。
しかし、この日の頃に台風が多いという感じはなく、むしろ8月下旬と9月中旬の方が多く、二百十日ごろの台風はむしろ少ないようである。
昔、この頃は稲の出穂期に当たり、強風が吹くと減収となる恐れがあるために注意を喚起する意味で言われ始めたのであろう。
私は福岡生まれで、いわいる九州男児である。福岡は俗に台風銀座と言われている。したがって台風の思い出はたくさんある。幼いころは台風というと妹と二人で押し入れの中に一晩中隠れていたものである。
ある日、少し大人になったころ、台風が来るというので母から家の周の板塀が倒れないようにつかえ棒をしておくように頼まれた。
隣の家は女手ばかりなのでついでに手伝うように言われた。隣には日頃より好意を持っていた美人で年上の女の人がいたので張り切ってこんこん、トントンと何本もつかえ棒を立てかけてあげた。
隣のお姉さんに「どうも、ありがとう。助かったわ」。と微笑みながら言われた時には天にも昇る気がした。
そしてなんと大好きな不二家のルックチョコレートをくれたのである。
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グリコキャラメルは一粒で2度おいしいといううたい文句であるが、ルックアラモードは「バナナ」「アーモンド」「ストロベリー」「コーヒー」と個性豊かな4種の味を1箱にアソートした、ロングセラー「ルック」の定番人気商品である。
1箱で4度おいしいチョコレートなのである。
「やったネ!」当時は明治の板チョコと並ぶ高級菓子であった。
さて台風が来て、過ぎ去った後のことである。
隣のお姉さんの板塀は何の被害も無く、無事であった。しかし本命の我が家はというと、角の家だったためか板塀の一角が見事に吹き飛ばされ、倒れていたのである。「やれやれ」
後で家族にくすくす笑われてしまった。
台風の翌日は連絡があり、学校は休みとなった。いわいる台風休みである。
周りを探検していると、道端にはトタンや、木材、本等が散乱していた。倒れかけた家、床下浸水した家もあった。
今でも覚えていることであるが丘の上の松の木が根元から倒れていたのにはさすがに驚いた。何せ直径1メートルはあった松である。台風というか自然の力は大したものだとその時思った。
現在私は通称「杜の都」と言われているところで、丘の上に居を構えている。「杜の都」は九州と違って台風の心配はほとんどない。台風の通り道になることはあってもほとんど温帯低気圧になり、そよ風程度になるからである。
同じ日本でも随分と違うものだとつくづく思う。
あの綺麗なお姉さんは今頃どうしてるかな。